アンデス・ブランカ山群(1)----太平洋側からアマゾン側へ のトレッキング |
私にとって南米には、チョット甘酸っぱい思い出がある。
新制中学(戦後の教育改革でできた中学校を戦前の中学校と区別して当時はそう呼んだ)1年生のときのことである。
当時は民主教育・平和教育を手探りで求めていた時代だった。 社会科のグループ学習で、世界の人々の生活を調べて、模造紙に大きく描いて発表することになった。
頭のいい奴は、ヨーロッパやアメリカを選んだ。
私は仲間と一緒に南米を選んだ。学校の図書室で見た当時珍しいカラー写真の本に、美しい自然が出ていたのに惹かれたからかもしれない。 今回の旅にはちょっとした因縁がある。 当初は妻と、古代遺跡や大自然を観光する南米一周の旅に行く予定であった。 ところが、妻が昨年暮れにスキーで骨折し、1年間は海外旅行ができなくなった。 妻から 「私がいけない所のトレッキングなら一人で行ってもいいよ」 と言われ、予てから狙っていたアンデスのトレッキングに行くことにした、というわけである。 すっかりリピーターになったアルパイン・ツアー・サービス社主催の11日間のトレッキングは、参加申込者が6名で、催行が危ぶまれた。 しかし、伊達には日本山岳会理事が取り仕切っている会社ではない。 追加料金も取らずにちゃんと催行してくれた。 前半をアンデス・ブランカ山群(1)に、 後半をアンデス・ブランカ 山群(2)にまとめた。合せてご覧下さい。 (2004年7月) |
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ワラスの町から望むペルー最高峰 ワスカラン(6768m) |
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南米ペルーの地図 |
ルート図 アンデス・ブランカ山群(1)の詳細地図 ( ━━ は(1)の行動範囲) |
リマからワラスへ |
成田を15時過ぎに離陸し、ヒューストンで乗り継いで、ペルーの首都リマの空港に着いたのは深夜。 日本とペルーの時差14時間を考えると、約18時間かかったことになる。 ホテルに直行。翌朝、専用車で、アンデス・ブランカ山群の登山基地ワラスへ向かう。 |
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深夜にリマ国際空港に着き、市内のホテルへ直行 |
翌朝リマ市内を車で出発。 市街地を出ると荒涼とした荒地が続く |
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荒地の中に貧しい人たちの住まいが続く | フジモリ前大統領の支持だろうか |
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太平洋を望むところで昼食。赤道を挟んで遥か彼方に日本があると思うと、ちょってロマンティックになる。 | 客は我々だけ。ここで出された海鮮料理は、すべて日本人の口に合った。 |
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セビッチェ 魚介類と野菜のサラダ |
イカとジャガイモの揚げ物 ビールによく合う肴だ |
白身の魚のトマト煮 |
アロス・コン・カングレホ ご飯とカニのチャーハン |
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低地ではまだ未熟のトウモロコシは、高地では取り入れ時。 庭や空地で天日干しをしている。 トウモロコシは南米原産。 5000年前(炭素同位元素法で測定)のペルー・アンデスの原住民たちは、すでに、トウモロコシ、ジャガイモ、トウガラシ、トマト、豆類、タバコなどを栽培していた。 大航海時代の征服者たちが、種子をヨーロッパに持ち帰り、たちまちアフリカやアジアに広がった。そのほか、サツマイモ、キウリ、カボチャ、パイナップル、パパイヤなども南米原産という。 |
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ペルーでは所々にチェックポストがある。治安を維持しているのだろう。 | 標高4050mのコノコーチャ峠付近まで来ると、待望のアンデスの山々が遠望できる。 |
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ワラスのホテルに着くと、先ずコカ茶がサービスされる。コカには麻薬成分があるので現地でしか飲めない。 | ホテルの夕食時に、フォルクローレの楽士がやってきた。管楽器のケーナとサンポーニャ、それにギターだけの編成だが、「コンドルは飛んでいく」 などを楽しく演奏してくれた。 |
夕食後、ホテルの屋上から夕映えのアンデスの山を眺める。明日の天気は? |
ワラスの町 |
人口約8万人のワラスの町はリマからおよそ400km、標高3028mのところにあり、アンデス・ブランカ山群への登山基地である。 |
早朝の散歩 |
町全体が傾斜地で、どこからでもアンデスの山々が眺められる。 治安もよさそうなので、早朝に一人で散歩した。 |
ペルー最高峰ワスカラン(右手前は南峰6768m、左向うは北峰6655m) 左遠方に4つの峰のある山はワンドイ(最高峰6395m) |
土曜日の朝であったが、教会には礼拝の人たちが集まっていた。ペルー全体では90%の人がカトリックだという。 |
近郊の市場 |
ワラス近郊の市場に行く。 絶好の被写体だが、こちらの人は写真に撮られるのを嫌うので、失礼にならない範囲で撮るのが、カメラマンにはつらい。 |
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八百屋ばかりで、肉屋は見当たらなかった | カボチャとカリフラワー専門? |
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アルパカの毛糸専門? | 現地の人は原色の衣類を好む |
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南米原産のフルーツ「チリモヤ」を売るおばさん。 ツアーリーダーが1盛4個を1ソル(約35円)で買う。 味は食べてのお楽しみ! |
ウルタ谷往復トレッキング |
旅程3日目の今日は、明日から始まるトレッキングに備える高所順応日ということで、ウルタ峠(4890m)まで車で往復することになった。 |
山 麓 の 村 |
段々畑には小麦やジャガイモなどを栽培しているようである |
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集落の中のあちこちに、家くらいの大きさの石が散在している。 かつて氷河に乗って運ばれた石が、温暖になって氷河が溶けたため取り残されたもので、「迷い石」といわれる |
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南米原産の作物の1つジャガイモ | ムギ |
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名も知らない花 | ワスカラン国立公園の管理事務所の掲示板 |
U字谷を登る |
U字谷を登るといっても、車に乗っての高度順化である。 のんびりと車窓を眺めながら、2万年以上前の氷河期に思いをめぐらす。 |
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かつてこの辺りまで氷河があった。ここは氷河が岩盤を削ってできたU字谷である。氷河が消えた後に残された岩屑がモレーンである。今、谷底のモレーン(ラテラルモレーン)の上を歩いている。 | モレーンの上の草原に 放牧されたウマかロバ |
車道は谷底から脇のモレーン(サイドモレーン)に移り、ツヅラ織の道が続く。岩盤は固くて削りにくいが、モレーンは砂利の集まりだから工事はし易い。 |
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ルピナスの雌という | ルピナスの雄という | |||||
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リマで現地の植物図鑑を購入できなかったので、残念ながら植物の同定はできない。 |
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かつての地殻変動の激しさを髣髴させる岩盤 アンデス山脈は基本的には安山岩でできている。 andesite(アンデサイト)の日本語訳が安山岩である! |
安山岩に貫入した 花崗岩が見られる |
標高4000mの山中にマリア像がある。道中の無事を祈るものだろうか。 |
いったい、どのようにしてアンデス山脈はできたのだろうか? 人工衛星で観測した 「地球表面の高度地図」 を見ると、南米の西海岸(太平洋)には、ペルー海溝(最深6262m) とチリ海溝(最深8170m) がある。 これは太平洋の海底が乗っているナスカプレートが、南米大陸が乗っている南米プレートの下に潜り込んでいるためである。 その結果、南米プレートは押し上げられて6000m級のアンデス山脈ができたといわれている。車の中から写真を撮りながら、こんなことを考えていると、やがて標高4890mのウルタ峠に着いた。 |
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地球表面の高度地図 米国のNOAA衛星による測定 |
南米大陸の断面 左の図のA-Bでの断面(想像図) |
ウ ル タ 峠 |
車で登れるウルタ峠(4890m)は、南米大陸の「大分水嶺」の上にある。すなわち、峠の東側に降った雨は太平洋に注ぎ、西側に降った雨はアマゾン川に流れ込んで大西洋に注ぐ。 |
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峠のこちらは太平洋側、向うはアマゾン側である | アマゾン川には氷河湖があり、峠越えの道が続く |
天気がよければ、ここから、コントライェルバス、ウルタ、チョピカルキなどの氷峰が見えるはずだが、生憎の天気! トレッキングが始まる明日からの好天気を祈って、ワラスに戻る。 |
ワラスからヤンガヌコ谷へ |
4日目から、いよいよ車を使ってトレッキングのアプローチが始まる。今夜はヤンガヌコ谷の奥地に、幕営予定である。 天気がよければ、途中でペルー最高峰ワスカランが望めるはずである。 |
ペルー最高峰ワスカラン(左が北峰6655m、右が南峰6768m) 北峰の黒く見える部分が、1970年6月31日のユンガイ地震で氷河が崩壊した。 ユンガイ村で死者5万人(生存者2千人)が出た。 助かった丘の上にキリスト像が建てられたという。 |
ヤンガヌコ谷は、巨大なU字谷 左はワスカラン(6768m)、右はワンドイ(6395m)、谷底は標高約3700mだから、比高約3000mということになる。 槍・穂高が海岸に突っ立ているようなものである。向うに見えるのは標高約5000mのネグロ山脈(海岸山脈)である。 |
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U字谷には、下流に女湖(チナンコウチャ)、上流に 男湖(オルコンコウチャ)がある。いずれも氷河の後退でできた氷河湖である。これはどちらだったかな? |
男湖の上流側の草原に幕営する。天気が心配だ。 |
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ダイニング・テントの中で寛ぐ 真中がツアーリーダー(添乗員)の東さん、参加者は写真に写っていない私を含めて6人。 和気あいあいの小グループである。 |
市場で買ってきたチリモヤ 半分に切って、スプーンで食べる。 とろっとした甘味がなんともいえない。 マンゴウ、マンゴスチンと合せて、世界の三大美果ともいう。 |
アンデス・ブランカ山群(1)は、登山基地ワラスへのアプローチ、U字谷のモレーンの上に咲く高山植物、大分水嶺であるウルタ峠、ペルー最高峰ワスカランの雄姿などを紹介した。 アンデス・ブランカ山群(2)は、いよいよトレッキングである。 引き続き、下の[次へ]をクリックして、アンデス・ブランカ山群(2)をご覧下さい。 |
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