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尾瀬檜高山の山スキー----中央分水嶺踏査シリーズ(1)
 
 カンディアンロッキーを旅行した時にガイドが説明してくれた。「ここよりも西側に降った雨は太平洋へ、東側は大西洋へ、北側は北極海に流れるのです」 実は、ロッキー山脈とアンデス山脈は、太平洋と大西洋を分ける世界最長の分水嶺である。

 わが国では、日本海と太平洋に分ける分水嶺を中央分水嶺
(または大分水嶺)という。「オホーツク海はどちらか?」など議論があるが、ここでは下の図のように定義しておこう。中央分水嶺は全長6000kmともいわれている。

 分水嶺をはさんで気候や植生などの自然条件が変わるだけでなく、言語、風習、産業なども違うことが少なくない。分水嶺の多くは県境や市町村境になっており、古くから生活圏の境界であった。分水嶺を調べることは、自然地理と人文地理の両方に絡む興味深いテーマである。

 2005年に創立100周年を迎える日本山岳会では、記念行事の1つとして 「日本中央分水嶺踏査登山」 を行うことになった。北海道はじめ各支部はそれぞれ地元の分水嶺を、本部および同好会はあらかじめ定められた地域を担当する。今回は、アルパインスキークラブの有志12名で尾瀬周辺を踏査した。

 今後私が参加できるのは、6000kmの全体から見ればほんのわずかな範囲ではあるが、自分の足で歩いた中央分水嶺を
中央分水嶺踏査シリーズ として紹介しよう。 (2004年4月)

分水嶺から見る檜高山
 
  
日本の中央分水嶺
堀公俊著 「日本の分水嶺」 山と渓谷社 を参考に作図した
  
尾瀬沼付近の中央分水嶺
5万分の1地形図および50mメッシュ標高データから
推測したもので、今後現地踏査で確認する必要がある
  

  
1日目 2004年4月24日
 
前日23日の夜遅く戸倉のロッジ長蔵に着いた我々は、大歓迎の風呂に入って、熟睡。 翌朝到着の、福井組、新潟組と合流して、中央分水嶺踏査の山行は始まった。
 
高石山 ▲
GPSによるトラックデータを、帰宅後5万分の1地形図の上に表示したもの
ソフトはカシミールTMを使用した。トラック番号は606個の中から適宜選んだ。
 
GPSによるトラックデータを、帰宅後鳥瞰図の上に表示したもの
ソフトはカシバードTMを使用した。カメラ位置は高石山上空2000m
 
A
昨夜泊まった戸倉のロッジ長蔵を朝出発する 車で行けるのは大清水まで
AA
大清水駐車場から市ノ瀬休憩所まではスキーを背にゆるい登りを歩く 一之瀬休憩所に到着したら、ここでシールを着けて、ここからはシール登高となる
 
A
三平峠への急坂を登る 三平峠に到着、一休み
 
        三平峠から1884m点へ分水嶺に沿って登る
写真の右側の斜面に降った雨は片品川に流れ、利根川に合流して太平洋に注ぐ。左側の斜面に降った雨は尾瀬沼に流れ尾瀬ヶ原を潤し、只見川となり信濃川に合流して日本海に注ぐ。このような広い尾根筋が分水嶺であることは今までの山行では気づかなかったが、分ってみるとなんだか楽しい。
 
A
1884m点で引き返して早稲沢左岸源頭に戻る。ここで分水嶺を離れ、一気に尾瀬沼を目指して滑る。 長いトラバースの後、広い斜面に出た。昨夜の軽い新雪が10cmほど積もり、4月末では望外の絶好の積雪条件である。林間では苦手のテレマークスキーだが、ここでは存分に楽しめた。 
 
A
20分余りの滑降で尾瀬沼に着く。どっしりと構えた燧ケ岳が我々を歓迎してくれた。 沼の端の湧き水のところに春の兆しが感じられる
 
長蔵小屋へ向かって沼の上を滑る
 
今日から開業の長蔵小屋で寛ぐ
夏は超満員の長蔵小屋だが、今日は我々のほかは数名だけ
 

 
2日目 2004年4月25日
  
夜間降っていた雪も止み、昨日と同様に晴天。今日は長蔵小屋から直接分水嶺に出て、分水嶺を辿りながら檜高山を経て昨日踏査した地点に再会し、三平峠の手前で分水嶺を離れ、冬路沢を源頭から滑って市ノ瀬に戻る予定である。

ところ
冬路沢源頭の滑り出し地点でルートを誤り、引き返すというミスがあった。GPSはそれを忠実に記録していた。
  
高石山 ▲
GPSによるトラックデータを、帰宅後5万分の1地形図の上に表示したもの
ソフトはカシミールTMを使用した。トラック番号は789個の中から適宜選んだ。
 
GPSによるトラックデータを、帰宅後鳥瞰図の上に表示したもの
ソフトはカシバードTMを使用した。カメラ位置は高石山上空2000m
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長蔵小屋を出発
 
稜線から小淵沢田代を望む。こちらは今年9月に踏査を予定している。
 
檜高山(1932m)を望むこの辺りはアップダウンが多く、シールを着けたままの滑りとなる。
 
分水嶺というと急峻な尾根を想像しがちだが、案外このような広い尾根であることが多い。事前に地図で分水嶺を調べて頭に入れておけば、ここが分水嶺であることを実感しながら歩ける。 右は日本海、左は太平洋である。
この辺の植生は、落葉樹のカンバと常緑の針葉樹の混生林である。 針葉樹はシラベとオオシラビソが多い。所々コメツガとトウヒが混じる。
 
A
積雪のため檜高山の三角点は発見できなかった。檜高山を過ぎて昨日のトレールを発見した。昨夜の降雪でトレールは消えかかっていた。 日光白根山(2578m)はこの付近では最も高い山。特徴ある頂を随所で見ることができた。
 
 
A
昨日確認した1884m点は今日はショートカットし、分水嶺に沿って縦走し、尾瀬沼が見える地点でシールを外す。これからは滑りだけということでニンマリする一時である。
 
後は滑るだけ。ところが、冬路沢源頭の滑り出し地点でルートを誤り、引き返すというミスがあった。そのときGPSで確認すればよかったのに勘に頼ってしまったのである。前出の「GPSによるトラック記録」をご覧下さい。この後一ノ瀬までの長い滑りを楽しんだ。
 
ともあれ、初めての中央分水嶺踏査山行は無事終了した。無雪期には藪こぎを強いられるこのルートであるが、残雪期には山スキーを楽しめる天国となる。ガイドブックに紹介されていない山スキールートを発見した満足感を味わった。

今回は、小生にとって初めてGPSを携行した山行であったが、1日目606点、2日目789点に及ぶトラックデータ(時刻、緯度、経度、標高)は完全に記録された。帰宅後、カシミールTMを使って5万分の一の地形図上に、カシバードTMを使って鳥瞰図の上に、ルートを再現することができた。
 

  
分水嶺とは何か
準備中
 
GPSによるルートの記録
準備中
 
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