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すばる天文台とハワイ4島(1)----
         
マウイ島・ハワイ島で植物・地学の観察と天文台見学


 ハワイといえば、熟年の私は歌謡曲の「憧れのハワイ航路」を思い出す。 戦後復興しつつある頃の日本人の憧れの象徴だったような気がする。 今では若者のマリンスポーツ、サーフィンのメッカになっている。

 かねてから、「ハワイの火山」と「すばる望遠鏡」を見学したいと願っていたが、その機会が訪れた。 日本山岳会の「山の自然学研究会」の仲間のFさんの骨折りで実現したのである。
その上、同じ仲間のSさんが社長をしている(株)ユーラスツアーズが旅の手配をして下さった。

 「山の自然学研究会」は、山岳人として山の自然学を研究して、自然保護に役立てようという趣旨で活動するグループである。 テーマは、「山はなぜ高くなったのか」、「この植物はなぜここに咲いているのか」、「地球温暖化は高山植物にどんな影響を与えるか」 など、最新のテーマから永遠のテーマまでさまざまである。

 「山はなぜ高くなったのか」 を研究していくと、地球の成り立ちの理論 「プレートテクトニクス」 に行き着く。 この理論によると、100万年に1島ずつ合計500万年かかって生み出されたハワイ諸島の歴史が説明できるという。

 さあ、足元の植物から、500万年のハワイ諸島の歴史、
100億光年の天文学の世界へ出発しよう。


すばる天文台とハワイ4島(1)
すばる天文台とハワイ4島(2)
に分けて掲載されています。 両方ともご覧下さい。

                          (2007年11月)
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ハワイ島マウナケア山にある
国立天文台ハワイ観測所
(通称 「すばる天文台」)
州  名 アメリカ合衆国 ハワイ州
州  都 ホノルル(オアフ島)
合衆国
加入
1959年8月21日(50番目)
面  積 1万6635km2 (日本の1/23)
四国よりも僅かに小さい
人  口 126万人
アジア系42%(内日系17%)、ヨーロッパ系24%、ハワイ原住民・太平洋諸島系10%
その他3%、混血21%
言  語 ハワイ語、英語(いずれも公用語)


Wikipedia(ハワイ州)を改変



(1日目) マウイ島

オアフ島のホノルル空港でハワイへの入国手続を済ませ、国内線に乗り換えて、マウイ島のカフルイ空港に到着。 先ずはハレアカラ国立公園のクラ植物園へ。




ハレアカラ国立公園・クラ植物園

ハワイに着いて最初の見学地「クラ植物園」で昼食の後、沢山の熱帯植物を観察した。

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日付変更線を越える夜行のフライトですぐに高所へ登るのは辛いので、植物園見学は有難い。

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山の中腹にあるのんびりとした所 薄い土壌の下は熔岩で、やっぱりハワイだと感じる

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キングプロテア

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バナナの花か? ニッコウキスゲの仲間 ゴクラクチョウカ

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イエロー・オレアンダ スミレの仲間 ブルー・ジンジャー

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ハイビスカス ハイビスカス 花の開かない種類のハイビスカス?

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パウダー・パフ(化粧用品に似ている) ラズベリー・フロスト ノーフォーク・アイランド・パイン

バスで移動中に、マウイ島に唯一残る砂糖工場を遠望した。
かつてはハワイにはサトウキビから砂糖を作る工場が
沢山あり、日本からも多くの移民が働いていた。



ハレアカラ国立公園・展望台

2694mの展望台から火口を覗くことができた。
山頂付近の溶岩原に珍しい銀剣草は咲いていた。

展望台から見る火口

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                              銀剣草(シルバ・ソード)
銀色の剣が集まったような植物。 この植物は稀少な高山植物で、標高がかなり高いところでしか生息しない。
現在、世界中で銀剣草が見られるのはヒマラヤ山中と、ハワイのハレアカラ、マウナケア山頂周辺のみであると
いう。 右の写真のような姿で10年前後を過ごし、一生に一度、花を咲かせる。

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虹はハワイの名物、毎日のように見られた。
右の人がカメラで狙っているのは?
ハワイガン(ネネ) 足に標識があるとおり野生であるが保護されている



イアオ渓谷州立公園

この渓谷には、最初にハワイを統一した初代カメハメハ1世(大王)にまつわる凄惨な歴史がある。当時ハワイ島の王であったカメハメハ大王はカフルイ湾から上陸し、マウイ軍を攻撃した。カメハメハ軍には2人の英国人顧問が同行し近代兵器を携えてマウイ軍をこのイアオ渓谷に追いやった。結果はカメハメハ軍の大勝利であったが、双方に多数の死傷者が出た。そのためにイアオ川は血で真っ赤に染まり死体で川の流れがせき止められたと言われている。

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溶岩でできた島には、奇妙なドームがある
 
どういうわけか、この渓谷は陰鬱に見えた。
後で、凄惨な歴史を知って、ぞ〜っとした。



(2日目〜3日目) ハワイ島

2日目は、早朝マウイ島からハワイ島に移動し、キラウエア火山で植物と地学の見学をする。3日目は同じハワイ島で「すばる天文台」を見学する。



ハワイ火山国立公園・キラウエア

ハワイ島は4つの島の中で一番若い島である。まだ火山が噴火している。キラウエア火口を展望できるロケーションにあるボルケーノ・ハウスで昼食を摂った後、溶岩トンネルの見学、イキ火口の火口壁と火口原の植生と溶岩の観察、ハレマウマ火口の観察と、盛りだくさんの一日であった。

ボルケーノ・ハウス

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ボルケーノ・ハウスは、ホテル兼展示場。 外装には溶岩が巧みに使われている。

(コアの木)

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コアの木はハワイで最も多く見られる樹木の1つである。三日月形の葉形が特徴である

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ボルケーノ・ハウスのロビーのテーブルとロッキングチェアはコアの木が使われている。

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コアの木は燃料にも 熱帯材に共通であるが、コアには年輪がない

(キラウエア火口展望)

ボルケーノ・ハウスから、眺めるキラウエア火口。 火口の長径は何と5km以上あり、
ハレマウマ火口はその中に、キラウエア・イキ火口はその外にある。

サーストン・ラバ・チューブ(溶岩トンネル)

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溶岩トンネルへ向かう 溶岩トンネルの入口

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溶岩トンネルの中はやっと歩けるほどの高さ。
ところどころ溶岩が溜まったところが、広くなる。
溶岩トンネルの中に照明をつけたので、
本来存在しないはずの植物が育つ。

「溶岩トンネルはどのようにして出来たか」という解説版があったので、翻訳してみた。

キラウエア・イキ火口

キラウエア・イキ火口は、キラウエア火口の外に隣接して存在する長径2kmほどの小さな火口である。 火口壁を降りて、火口原を観察した。

(キラウエア・イキ火口の火口壁)

ハプウ(シダ)  現地インタープリターの長谷川さんが説明してくれる

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ハプウは大木になる シダの森の薄い土壌の下は熔岩

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ハプウ(ハワイの代表的なシダの1つ)

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ウルヘ(外来種のシダで、繁殖力が強い) アマウ

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マヒナルア(シダ)
 

 
Gonocormus minutus
世界最小のシダ

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ハワイのミント(香がない) レッド・ジンジャー パイニウ(ユリ科)

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イリヒア ハワイ固有のアジサイ

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ブラック・ペッパー  ラウアエ(シダ)


(キラウエア・イキ火口の火口原)

一見荒涼とした溶岩の上であるが、いろいろな植物が生育しており、驚かされた。

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           アア(A'a)溶岩
表面がゴツゴツしていて、日本の溶岩に近い性質をしている。その昔ハワイの人達がこの溶岩の上を裸足で歩き、あまりの痛さに「アア!」と声を上げたことからアア溶岩と呼ばれるようになったとか。
       パホエホエ(Pahoehoe)溶岩
ハワイ語で「滑らか」という意味。アア溶岩に比べ温度が高く、シリカ成分が少ないため、水のように流れる
流動性の高い溶岩。溶岩トンネル(Lava Tube)はこの溶岩によって作られる。

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パホエホエ溶岩の割れ目から暖かい空気が--- 溶岩の割れ目に落ちないように歩く

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白い粉は硫黄成分だという 鉱物が析出したような熔岩

熔岩の割れ目に生えたシダ(クプクプ)
土壌の少ない熔岩上にいろいろな植物が生育しているのに驚く。
地衣類、シダ類、潅木の順に出てくるのであろう。

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地衣類 アマウマウ クプクプ

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モア(学名 Psilotum nudum) プキアウェ クパオア

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オヒアの木(貧栄養な熔岩の上で美しい花を咲かせるのは全く驚きだ) オヒアの蕾と花と種子

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地衣類の上に生えたオヘロ オヘロの花と実 バンブー・オーキッド(外来種)

ジャガー・ミュージアムとハレマウマ火口

キラウエア・イキ火口からキラウエア火口を車で一周し、
キラウエア火口の中にあるハレマウマウ火口を遠望した。

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ハレマウマウ火口を遠望できる地点で
凧を揚げるKさん
ジャガー博物館への到着は遅くなり、
残念ながら閉館していた

ジャガー博物館から眺めるハレマウマウ火口。 この火口は1823年から1924年までどろどろに溶けた溶岩池が維持されたが、1924年の大噴火で溶岩が排出された。 この頃の噴火の映像は、オアフ島のビショップ博物館においてビデオ(後に掲載)で見ることができる。



ハワイ諸島はどのようにしてできたか
プレートテクトニクスの話

ハワイには大きな島が8つあり、ほぼ北西から南東に並んでいる。
地層や植物を観察すると南東に行くほど島ができてから新しいことが分る。 最も新しい島「ハワイ島」には活火山があるし、その南東
30kmの海にはロイヒ海底火山が活動中である。

ハワイ諸島は1年に約10cmの速さ(つめが伸びる速さ程度)で
北西方向に移動している。 6000万年後には日本に到着するかも知れない。 このようなことは、「プレートテクトニクス理論」から推測される。

プレートテクトニクスとハワイについて、説明をご覧になる方は
下記をクリックして下さい。

プレートテクトニクスとハワイについて見る




国立天文台 ハワイ観測所 (すばる天文台)

ハワイ3日目は、いよいよ 「すばる天文台」 の見学である。
午前中は国立天文台ヒロ・オフィスを見学し、マウナケア山
の中腹にあるオニズカ・センターで高所順応をかねた昼食・
休憩、午後山頂の 「すばる天文台」を見学する予定である。

ヒロのホテルから

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ホテルのベランダから、南国の海を眺めることが出来る

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朝の出発前に、近くの公園を散策
 
椰子の葉越しに、マウナケア山頂上の
天文台列が見える。山肌の白いものは新雪。

国立天文台 ハワイ観測所 ヒロ・オフィス

ヒロ山麓施設ともいわれるこの施設には実験室、図書室、計算機室があり、80人以上のスタッフが研究に携わっている。標高4200mの
マウナケア山頂での作業は危険を伴うため、望遠鏡から離れて出来
る作業は、すべてここで行なわれる。

ヒロ・オフイスの全景

ヒロ・オフイスの正面で、案内して下さった林左絵子先生(最後列左端)と一緒に記念写真

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展示ロビーで説明して下さる林先生

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新しい観測装置の準備風景
 
 
 
 
 
 
    ペタバイト(petabyte)級のメモリ装置
すばる天文台から送られてきた観測データはここに蓄えられた後、直ちに海底光ケーブル経由で東京三鷹の国立天文台に送られバックアップされる。
ペタは1015(=千兆)倍を表す接頭辞
  したがって、1ペタバイト=1千兆バイト

オニズカ・ビジター・センター

海抜0mのヒロの町から四輪駆動車で一気に4200mのマウナケア頂上に上ると高山病の恐れがあるので、標高2800mのオニズカ・ビジター・センターで休憩を取ることになっている。 我々はここで昼食の弁当を食べて、付近を散策した。

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ここは、NASAのスペースシャトル・チャレンジャー号の事故で亡くなったハワイ出身の日系人のオニズカ氏を記念して名づけたれた。 センターには、売店・休憩室がある。夕方には庭に望遠鏡を置いて星の観察会も行なわれるという。
 

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センターの付近はちょっとサバンナ的風土である 銀剣草(左)とビロード・モウズイカ(右)

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2種の草本? ママネの木と花

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ハワイ人のお供え台(クワフ) 椰子の実、貝殻、貝殻のネックレスなど海洋民らしいお供え物

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↑↓この付近に氷河地形があるというが、車からは分らない
                標高3500m付近にある氷河地形の保存の標識
信じられないことだが、2万年前にマウナケアの山頂付近には広さ45km、厚さ60〜100mの氷河があったが、1万年前に溶けてしまったという。氷河の存在の証拠となるモレーンや擦痕が見られるという。

目指す「すばる天文台」(左端)が近づく

国立天文台 ハワイ観測所 すばる望遠鏡

国立天文台の大型光学赤外線望遠鏡(愛称「すばる望遠鏡」)は、有効直径8.2m
の反射望遠鏡で、世界最高級の性能を有する。 建設総額400億円、ファースト・
ライト(初観測)は1999年1月29日。 現在約10種の観測装置が活躍している。

すばる天文台に到着して最初に撮った「すばる天文台」の1枚
他の天文台の球形ドームと異なる円筒形のドームは、外部の乱流を含んだ空気を
持ち込まずに、内部の熱を効果的に排出することができ、
良好な観測に役立つと
いう。 左側の長方体はカセグレン焦点階へのエレベーター

見学できたのは、4つの焦点のうちの主鏡のすぐ下にある
「カセグレン焦点」と、望遠鏡を支える回転台。 残念ながら、
主鏡は見学コースには入っていない。
        掲載許可済の遠藤孝悦画・日経サイエンスを改変しました

カセグレン焦点に取り付けられた観測装置

左は2000トンのドームを支える直径40mの回転台、右は555トンの望遠鏡を支える回転台
上の写真をクリックすると当日撮影したビデオをご覧になれます


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                      主鏡の蒸着装置、主鏡搬送装置
大気に曝されている主鏡は、3年に1度アルミ蒸着(メッキ)をし直す必要がある。 観測を中断して再蒸着するに要する日数は、準備と後作業を含めて1ヵ月だという。 メインテナンスの方々の苦労が偲ばれる。


         国立天文台のホームページから見る

一般に見学できない主鏡、主鏡の裏のアクチュエータ、主鏡の蒸着作業などは、国立天文台のホームページに接続してご覧になれます。
「主鏡の蒸着作業のビデオ」を見る


         すばる望遠鏡を高性能にしている2つの工夫

すばる望遠鏡と高等学校などにある望遠鏡の違いは、主鏡の大きさだけではありません。
すばる望遠鏡は肉眼で見るのではなく、光学や赤外線のスペクトル像を高い解像度で観測
するのですが、それを可能にしているのは次の2つの工夫がなされているからです。

@ 主鏡の直径が大きくなると、せっかく正確に放物面にに磨いた鏡が、自分の重さで歪んで
  しまう。 これを補正する
能動光学
A 地球上の望遠鏡は大気を通して観測するので、大気の揺らぎのために像がぼけてしまう。
  これを補償する
補償光学
下記をクリックして、小生が書いた説明をご覧下さい
能動光学と補償光学の説明を読む


最後に、すばる天文台の前で記念写真

A
すばる天文台ドームの標高は4139mというが、
GPSでは4187m、気圧高度計では4210mとやや高めに出た。


NASA等が運営するケック望遠鏡

すばる天文台の見学は10名ずつ2回に分けて行なわれた。
交代の間に隣にあるケック望遠鏡を見学した。

左の双子のドームがケック望遠鏡

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ケック望遠鏡は、石油で財をなしたW.M.Keckが創立したケック財団の寄付金で建設されたもの。 同一設計の2つの望遠鏡からなり、ファースト・ライトはそれぞれ1993年と1996年。 主鏡の直径は10m。 ただし36枚の正六角形の鏡からなる。各鏡は重力による歪を補償する補償光学装置によって支えられている。 また、大気の揺らぎによる像のぼやけをを補正する補正光学も採用されている。 見学室から自由に見学できる。

マウナケア山・頂上

折角ナウなケア山に来たのだから山頂を踏もうと、Kさんと
2人で登った。 高所ではあったが30分ほどで往復できた。

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山頂へは天文台から一度コルへ
降りてから、100mほど登る(登頂するK氏)
マウナケア山頂(4205m)と三角点(右)(撮影K氏)
  

山頂の展望は素晴らしく、夕映えの「すばる天文台」が指呼の間に望まれた

「すばる天文台」と「ケック天文台」

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遠方に見えるマウナロア山(4170m)の中腹(3400m)に、NOAA(米国海洋大気庁)のマウナロア観測所がある。  マウナロア観測所では、キーリング博士が1957年以来大気中の二酸化炭素(CO2)濃度を測定してきた。 それが今、地球温暖化の原因究明に役立っている。
濃度が波打っているのは、北半球では夏は植物の炭酸同化作用が活発だから

「キラウエア火山」と「すばる天文台」という、2つのビッグな見学を終え、大満足なハワイの旅の前半であった。



下記の [次へ] をクリックして、引き続きハワイ(2)をご覧下さい。



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