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薬師岳・立山の氷河地形----山の自然学シリーズ(6)

 日本山岳会にはいくつかの研究会・同好会があるが、その1つである「山の自然学研究会」では、毎年何回かの研修山行を行っている。今回、薬師岳・立山の氷河地形の観察山行が行われた。

 日本には数十万年以降に何回かの氷河期があり、当時の高山は氷河に覆われていたといわれている。氷河は山を侵食し、スプーンで削ったような地形、いわゆる氷河地形(U字谷、圏谷、カールともいう)を残した。

 氷河地形は風雨による侵食のため少しずつ消えていく。現在の日本の氷河地形は、5万年前(横尾氷期ともいう)の氷河と2万年前(涸沢氷期ともいう)の氷河の痕跡である。

  接近する14号台風が進路を変えてくれることを祈りつつ、 夜行1泊、山中4泊の予定で出かけた。
 (2005年9月)

薬師岳 金作谷カール




全行程の軌跡(GPSによる自動記録)

地図が表示されるまでしばらくお待ち下さい
台風接近のため、氷河地形の観察は、薬師岳周辺のみとし、立山周辺はできなかった。



折立〜太郎平小屋

東京池袋から夜行バスで富山に到着、電鉄富山で有峰口へ、さらにバスで折立に向う。 折立から約5時間の登りで太郎平小屋に着く。

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バスは途中の有峰湖展望台で小休止
北陸電力の有峰ダムは、1960年に完成した
高さ140m、堰堤長500mの重力式ダム
折立休憩所で身支度し、
いよいよ登山が始まる
 

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太郎坂を登り、太郎兵衛平に至る
 
 
十三重之塔
1963年1月、薬師岳登頂中に三八豪雪
のため遭難死した愛知大13名の慰霊碑

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イワハゼ(アカモノ)の実 タカネヤハズハハコ ウサギギク チングルマの実

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        太郎兵衛平への登りの石畳
登山道が広がって荒廃したので中央に石畳を作ったが、それが歩きにくい。そのため石畳を避けて外側を歩く人が多くなり、石畳の両側が荒れた。そこでネットをかけて保護しているので、仕方なく歩きにくい石畳を苦労して歩く。(適切でない登山道整備の例といえる)
やがて石畳は木道に変わり、
太郎兵衛平まで延々と続く
 
 
 
  

A
太郎兵衛平付近の木道は、滑り止めの刻みがあり、傾斜地では水平にしてあり、歩きやすい 太郎平小屋に宿泊
 


小屋の前から眺める薬師岳


夕映えの山々 左から水晶岳、ワリモ岳、鷲羽岳、祖父岳


左から三俣蓮華岳、黒部五郎岳、北ノ股岳、太郎山



太郎平小屋〜スゴ乗越小屋

今日は太郎平小屋を出発して、薬師峠、薬師平、薬師岳山荘を経て薬師岳山頂に立ち、北薬師岳、間山を経て、スゴ乗越小屋に至る稜線展望コースである。途中、薬師岳カール群の観察が楽しみである。

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太郎平小屋を出ると、すぐに木道が始まる ここの石畳は、扁平な石を使用していて歩きやすい

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イワショウブの実 ミヤマアキノキリンソウ タケシマラン ナナカマド

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登山道の右手に見えるのが二重山稜
二重山稜は、山稜の片方が谷側へずり落ちて
できたもので、線状凹地または舟窪ともいわれる
二重山稜(線状凹地)が出来る原因の1つに滑落型がある。
小泉武栄著 : 「山の自然学」 岩波新書より

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薬師岳の登山道には、
いろいろな色の石がある
 
赤褐色の石
火砕流堆積物と思われる
 
灰色の石
ガラス質のものがありそうで、
溶結凝灰岩かもしれない

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稜線の西側には、風により移動した礫が階段状に並んだ「階状土」や「条線土」ができている 薬師岳山荘
 
 
薬師岳山荘の手前にある
「国指定特別天然記念物
薬師岳の圏谷群」の標識

国指定特別天然記念物薬師岳の圏谷群


南稜カール


中央カール


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                      金作谷カール
いずれのカールも、2段滑り台のような形状をしている。 これは5万年前の横尾氷期の時に下段まで氷河が拡大し、2万年前の涸沢氷期の時に上段だけ氷河に覆われたからかもしれない。 氷河が削った岩塊や礫が堆積した「端堆石堤(ターミナルモレーン)」や、「側堆石堤(ラテラルモレーン)」が見られる。


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      薬師岳東南稜に見られる非対称山稜
山稜の西側(右側)は、卓越風に曝されるので雪は吹き飛ばされて積雪が少ない。これに対して東側(左側)は雪の吹き溜まりになり氷河が発達し、氷河による侵食を受けたので、急峻な斜面になっている。
非対称山稜を形成する山頂現象のモデル

 小泉武栄著 : 「日本の山はなぜ美しい」
   古今書店より
  

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北薬師岳の下りは、大きな岩の岩塊斜面で歩きづらい タテヤマリンドウ(?)
 
ヒメゴヨウイチゴ
 
 ミヤマコゴメグサ
 

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ここにも二重山稜がある。二重山稜は窪地であるので雪渓が残り、雪渓が消えた後はお花畑になりやすい。

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もう1つの二重山稜には、池があった
 
 
黒部川上廊下に、土砂が堆積しているのは、ダムのせいか?



スゴ乗越小屋〜五色ヶ原山荘

今日はスゴ乗越小屋を出発して、五色ヶ原山荘まで行く。途中、スゴノ頭(2431m)、越中沢岳(2591m)、鳶山(2616m)を経由する。台風が近付いているが、今日は天気が持つだろう。

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スゴ乗越小屋
 
スゴ乗越小屋から眺める今日の行く手
右からスゴノ頭、越中沢岳、鳶山

振り返る薬師岳
右から間山、北薬師岳、薬師岳

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越中沢岳
 
越中沢岳から見る崩壊地
防ぎようのない自然の営みであろう

越中沢岳山頂(2591m)にて記念写真

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ハクサンフウロ イワツメクサ トリカブトの花と実


鳶山下山道から眺める五色ヶ原 左上に五色ヶ原山荘が見える


五色ヶ原山荘



五色ヶ原山荘〜立山室堂

今日は五色ヶ原山荘を出発して、内蔵助山荘まで行く予定であったが、台風の影響が出てきたので、一ノ越から室堂に下山することになりそうだ。

獅子岳の登りから眺める五色ヶ原
五色ヶ原は大きな溶岩台地で、氷河により侵食されたことが分かる

五色ヶ原は一皮めくれば溶岩の塊である

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この付近は基本的には花崗岩でできている 一部(登山道で10分足らずの間)は黒色の岩である

龍王岳付近から見る御山谷カール 残念ながらガスのため見にくい

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一ノ越から眺める室堂
ここは立山火山による溶岩台地である。
左上に室堂バスターミナルが見える。
ホテル立山に隣接した室堂バスターミナルに辿り着き、今回の山行は終了した

当初の予定では、薬師岳からスタートして立山までの氷河地形を観察する予定であったが、台風14号の接近のため、1日短縮せざるを得なかった。

残念ながら、立山周辺の御前沢カール、内蔵助カール、真砂沢カール、剣沢カール、山崎カール(日本にもかつて氷河があったことを明治後期に主張した山崎直方博士の教え子石井逸太郎による命名)などは観察することができなかった。

近いうちに再度訪ねたい代表的な我国の氷河地形地帯である。
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